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福岡家庭裁判所 昭和33年(家イ)157号 審判 1958年7月25日

申立人 大野匡(仮名)

相手方 大野アサ(仮名)

利害関係人 大野義巳(仮名)

主文

申立人と相手方とは離婚する

申立人は利害関係人に対し同人の養育費として昭和三三年七月以降昭和三六年三月迄の間毎月金八五〇〇円宛を毎月二〇日迄に支払わなければならない

申立人は利害関係人に対し右養育費の他利害関係人の実習費について之を負担する

当事者双方は爾後本件離婚に関して金銭その他一切の請求をしてはならない

調停及び審判の費用は各自の負担とする

理由

一、山口県○○郡○○村長作成の申立人の尸籍謄本の記載によれば申立人と相手方は現在婚姻中であることが認められる。

二、申立人は昭和五年○月○日相手方と婚姻し三男を儲けたが二男弘は昭和二二年○月○○日死亡し長男晋一は既に一家を構え三男義巳(昭和一〇年○月○○日生)は現在相手方宅より山口県○○市○○○○所第○学年に在学中である、然るに相手方とは昭和二五年二月頃より不和となり今日では婚姻継続が困難な状態になつたので離婚したい旨申立て調停期日には申立人の実兄大野寛をして代理人として出頭させた。調停委員会に於て相手方も又離婚には同意したが当事者間の三男である利害関係人の養育費について同人が前記○○○○所を卒業する迄の間毎月金一二、〇〇〇円の支払方を請求した。

三、当裁判所は昭和三三年六月五日釧路家庭裁判所帯広支部の申立人に対する嘱託審問の結果によれば申立人は相手方主張の利害関係人に対する毎月一二、〇〇〇円の請求に応じかねる旨の申述をなしているがその後昭和三三年七月一七日午前一〇時の調停期日には申立人の代理人大野寛は利害関係人の養育費が毎月金八、五〇〇円宛であるならば承諾する旨及び利害関係人の実習費については申立人が従来より之を負担し来ていたもので利害関係人の卒業に至る迄は申立人は父親としてその援助は当然と思われるのでこれを承諾する旨述べ主文の通りの合意が成立した。

四、仍而当裁判所は右合意が諸般の事情より考慮して相当と考えるものであるが本件は離婚の調停事件であり離婚は身分行為で申立人は遠隔地にありて代理に親まない行為であるからそのまま調停成立せしめるわけにはいかぬから調停委員入学虎之助、同大浦キミの意見を聴いて主文の通り審判する。

(家事審判官 大津浅吉)

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